「失敗」時間のありがたさ
「失敗は成功のもと」というように、
失敗することの大切さは誰もがわかっている。
失敗するということは、=挑戦している証であり、
常に新しい表現を追い求めていかなければいけないクリエイターにとっては、
「失敗」は常に必要不可欠なものだ。
けれど、失敗する時間がもったいないと感じるのも事実で、
忙しく依頼や締め切りに追われれば追われるほど、無駄なく仕事をしたいと感じる。
そして失敗作を作ることを怖がるようになり、挑戦を先延ばしにしてしまうようになる。
失敗しない方法を選ばなきゃいけないもどかしさ。
私は依頼の仕事ではない自分の切り絵作品を作るときは、常に今までやったことがない技法を取り入れたいと思っている。
同じことをやるのに飽きてしまう性格もあるが、常に新たな手法を試していかなければ、成長はありえないからだ。
自分の切り絵作品というのは、大体が個展やグループ展のために用意するもので、当然「今までで一番お気に入りの自信作」を飾りたくなる。
しかし最近はスケジュールが厳しく、「来週のグループ展までに新作3点作らなければ・・」ということが続いていた。
そうすると、ついつい今まで成功してきた「作り慣れた手法」で制作することが多くなる。
「このままではいけないな」と、もやもやした気持ちを抱えていたが、
最良の仕事をするために「失敗」を避けるのは仕方がないと考えていた。
戻ってきた時間
長いことそんな期間がすぎ、これからの制作のあり方やスケジュールを見直さなければと考えていた矢先、
コロナの影響からか、奇跡的に依頼の仕事が途絶えた。
本当は焦る状況で、正直私は少しホッとしていた。
自分自身を整え直す時間が取れたという気がした。
この2ヶ月の最後に残っていた依頼の仕事は、いつもより時間をかけて納得いくまで考えることができた。
「これ以上もうやれることはない」と思って今までは完成にしたような作品も、納得いくまで自分に問いかけ、考え直した。
そうすると今までは「成功」としていたような完成度の作品に「失敗」と判断を下す自分に気がついた。
そして、たっぷりと時間を与えられて、どんどん良くなっていく作品を目の当たりにした。
これからは「失敗」する時間を大切にしていきたい。
一生懸命作品を作って、それがうまくいかなかったら、
本当はすごく悔しいし、こんなの作らなきゃよかったとさえ思うだろう。
でも本当は、失敗も成功も、自分の判断で決めるもので、
失敗作を作る、「これは失敗だ」と認められる、そんな時間や余裕を持てることはとても恵まれたことではないだろうか。
常により良いものを目指しているなら、常に現状は「失敗」なのかもしれない。
それは考えすぎだとしても、挑戦を避けるようなことはこれからはしないでいたいと思った。
何より自分の作家としての気持ちのために。
もちろん時間をかければ必ずいいものができるわけではないけど。。
そういえば、メンタリストDaiGoさんの著書に「倒れない計画術 まずは挫折・失敗・サボりを計画せよ」というのがあった。
読んだことないけど、タイトルだけですごく刺さる。今度読んでみようかな。
クリエイティブな人間にとって最も大事なこの3つを無駄だと切り捨てて、私は少し蔑ろにしてしまったかもしれない。
これからは、いかに失敗をするか、失敗を作る時間を大切にしていこうと思う。
失敗は恥ずかしくない。
残念でもないし、無駄ではない。
これからもそれを忘れないようにしよう。
平石智美
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