「旧交を温める」
これまで私は人生は1人で駆け抜け突き進み新しい扉を開いていくものだと思っていた。
そのたびに過去は切れ新しい縁と共に歩んでいく、そんなふうに捉えていた。
だが、最近になってやっと、人生の全てはつながっているのだと気づいた。
昨年は、私にとっては「再会」の年だった。
走る続けることに疲れ、幼い頃懐かしく思う時、あの頃途絶えさせてしまった縁を後悔する。
進むのに疲れてしまった、私の人生何だったのだろう。そう思えたとき、懐かしい人に会いたくなった。
もう必要がないと旅立ったつもりだったのに。
小学校の友人。
10年離れていた親友。
2度と会えないと思っていた中学の恩師。
私の人生で重要なのに連絡先がわからなかった高校の恩師。
音信不通だったかつての同僚。
その他にも、連絡を取る勇気がなくて、疎遠になっていた人たちに、自分からだったり、思いがけず向こうからだったり、つながることができた。
全てもう切れてしまった縁と思い込んでいたのは間違いだった。
それらはまだ生きていた。
そしてまた温めることができた。
コードをつなげるように、私の心を温めてくれたのだ。
「旧交を温める」
なんて、美しい言葉だろう。
人は、つい新しい輝く出会いを求めがちだ。
私みたいに、その時その時で、生きる場所や、環境を変えてきた人間は、過去を捨て新しい地で頑張るために、昔の人間関係をおろそかにすることがある。
そんな私を、彼らはもう忘れてしまったか、あるいはよく思っていないか。などと考えれば、なおさら、今更会いに行くことなどできない。
けれど、私が思うより皆優しく迎えてくれた。
そこには途切れていた月日など関係ない位に。
人生はつながっていると、この年になって、理解してきた。
断絶していた何もかも、点だった出来事も。
今になって、結ばれて、私につながってきた。
無駄なことなどない。切れた縁などないのだ。
全てを手繰り寄せて、それらの線は、私の「根」となって私を立たせてくれている。
しっかりと私を立たせてくれている。
「旧交を温める」
この言葉を胸に刻んでおこう。
この根の温もりの上に私は咲いているのだから。
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