「昔の名前で出ています」
「昔の名前で出ています」
小林旭の曲のタイトルだ。
小学生か中学生だろうか。この曲を知ったときに深く胸に染み落ちた。夜の世界も、ましてや恋も別れも知らなかったはずなのに、この歌の気持ちはこのタイトルだけでも、自分のことのようにわかるような気がした。
待つしかできないんだよね。こちらからは連絡できないから。
それでも、同じ名前でずっと生きていたら、いつかあなたが見つけてくれる。
それに希望かけるしかないのだ。と言う事が、
ずっと心のどこかにある。
10代の頃私は創作活動するのにペンネームを使っていた。
それは本名で活動は若い頃は難しいからと言うのもある。あと恥ずかしいから。
趣味のオフ会やネットでのコミュニケーションもハンドルネームを使っていた。
だから、本名よりも、そっちの方がみんなに知られていたし、自分でも呼ばれて心地よかった。
20歳初めて個展するときに、作家として、どの名前にしようと思った。
長く使ってきたハンドルネームも考えたけれど、本名にしようと決めた。
理由はいろいろあるけど、その中でも1つが「懐かしい人に見つけてもらうため」だったと思う。
同級生・先生、今まで知り合った人たち、そして疎遠になってしまった人たち。
そんな人にいつか見つけてもらえるんじゃないかって、また繋がれるんじゃないかって。それで本名にした。
作家をしていると、常々思う。
「私たちは待つしかできないのだ」と。
いつでも、お客さんを「待つ」身なのだと。
ずっと応援してくれたけど、いつの間にか来なくなってしまった人もたくさんいる。
どうしてるかなぁと思い憂うのだけど、でも私にできる事は、同じ場所で同じように作品を並べ、変わらずに、こうして活動し続けることだけ。
いつかまた巡り会えても会えなくても。
作家は待つ人なのです。
だから、会いに来てね。
私はずっとここにいますから。
これからもこの名前で生きていきますから。
と。
ふとそんなことを思い出した。
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