読書記録02「長襦袢の魅力 着物の下の遊び心、女心」
図書館でとにかく素敵な本を見つけました。
書籍の雰囲気から少し前に発行されたものかな?と思ったら、初版が2019年でした。こんな魅力的なテーマの書籍が最近出版されたものだということが、なんとなく嬉しくなりました。
長襦袢というのは着物の下に着るもので、所作により襟元、袖、裾などからその色柄がほんの少しだけちらりと見える見せられる下着のようなものです。
本の冒頭ではこのように綴られています。
「「着物美」には本来欠かすことのできないはずの長襦袢が、いつのまにか下着扱いになり、色を失い、長いあいだみすごされてれてきたように思われます。」
「長襦袢が「下着」という位置づけで認識されるかぎり、日本女性の複雑な色や柄を自在に操り、楽しむ能力は、発揮する場をまたひとつ失ってしまうようで、実に惜しいことなのです」
大正から昭和初期の長襦袢は赤や文様のカラフルなものが多く、重ね着のお洒落、見えないお洒落を楽しんでいたようです。
洋服が普段着になり、和服が逆にフォーマルな場でしか着られなくなった近年は、フォーマル用の長襦袢が主流なのか、派手なものが好まれないのか、売られているのは白やごく淡い色の長襦袢ばかり。
この本は、長襦袢が隠れた「主役」だった良い時代を思い出させてくれる本でした。
よくこんなに集めたものだなぁと感心するほど長襦袢について描かれた絵画が紹介されており、特に長襦袢を描く画家として、竹久夢二、高畠華宵、小田富弥の3人をピックアップしていました。
「長襦袢という観点から絵画作品を見直してみると、画家によって長襦袢を描く画家と、描かない画家にはっきり分かれる。描く画家は非常によく描くが、描かない画家はほとんど1枚も描いていない」
私は、本来正しい状態なら見えることはない長襦袢というのは、心の裏側というか、内側というか、強い感情の表現にふさわしいような気がしますし、そこまでは行かなくても、どこか人間味や自然さが表現できる、絵描きの感情表現にとってとても便利な「小物」だと思ってます。
何より、やはり「下着」なのですから、女性画ならではのセクシーさの表現には欠かせない存在。
私だったら間違いなく、どの絵にも執拗に描くだろうなぁ。なんて思ったり。笑
絵描き的視点からみて、着物生活をしていた時代ってやはり魅力的だなぁと感じてしまいます。
実際生きてないから想像なんですが。。
この本に出会って私が「着物」に憧れていた理由や、魅力を感じていた部分が何かということを気づかせてもらいました。
本当の「魅力」を見えない部分に隠している日本人らしさが、着物の本来の魅力なのかもしれませんね。
普段着として着物を着る人が増えて、長襦袢のお洒落がまた流行り、昭和のような華やかな長襦袢がたくさん広まるといいなと思わずにはいられません。
ちなみに、この本を見つけて、赤い長襦袢が欲しくなって、リサイクル着物店で見つけて買ってしまいました。
リボンみたいでかわいい「結び文」文様です。
パッと目を引く補色のグリーンの半衿が付いたまま販売されてました。
本と同化する!いいかんじ。
とても気に入った本なので、後ほどちゃんと購入したいと思ってます。
隅々まで、編著者さんたちの愛情がつまったいい本でした。
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長襦袢の魅力 着物の下の遊び心、女心
2019年8月30日発行
編著者 岩田ちえ子+中村圭子+中川春香
株式会社河出書房新社
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