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読書記録22「センスの哲学」千葉雅也著

 

 

講座の合間、生徒さんが集中されてる時間に、私も少しだけ本の世界に入っていました。

 

自分が芸術的な活動していると、たまに「私センスがないんです」とか「絵心がないんです」っておっしゃる方にいてくわすんですね。

本音なのか謙遜なのかわからないけど、正直私その言葉がすごく嫌で。

センスとか絵心って、皆さん「才能」みたいにもともとあるようなものって言う言い方をするんですけど、私はセンスとかって後から磨けるものだと思ってるんです。

だから「センスを磨く」とか「センスが目覚める」みたいなそういう表現があると思うんです。言い方が悪いですが「私センスがないんです」って言われると、その辺の努力を放棄してるような、根本的に分かり合えないような寂しい気持ちになるんです。

 

だからといって、「こうしたらセンスが磨けますよ」っていうのを私はうまく言語化ができない。

 

そうしたモヤモヤした部分があって、この本を見つけたときに、センスについて答えがあるのだったら読んでみなくちゃって思いました。

読みたいというか、芸術家として読んでおかなくてはいけないと言う気持ちで手に取りました。

 

千葉雅也さん、有名なのでYouTubeで知っていたけど著書を読んだ事はなくて。プロフィールを見たら栃木県の宇都宮市出身で、私と同郷だったのも親近感でした。

 

本書では、センスとはそもそも何かと言うところから、センスが良いとはどういうものかと言う内容をいろんな例を交えて深く説明されてます。

音楽であれファッションであれ、デザインであれ、美術であれ、表現者でセンスがある人は、なんとなくでやってしまっていることを、言語化するとこういうことなんだ、って言う気づきと学びがありました。

 

この本では「センスがいいとはヘタウマである」というような説明があり、一般的に誤解されている「上手とか下手」というのはセンスの世界とは土俵が違うんだよっていうことにも言及されてますし、意味がわかるとかわからないとかそういうこともセンスには必要ないというよいうなことを言ってると思います。

その辺りも芸術家なら、誰もが共感できるような感覚だと思います。

 

ただ「哲学」とある通り、文章はとても優しく読みやすいのですが、内容は難しく、私が理解力が乏しいのもあり、読みながらずっとつかめない雲をかき分けながら進んでいるようでした。掴めそうで掴めないようなモヤモヤが、晴れたり晴れなかったり。

250ページの本書もいちど読み終えただけでは、自分のものになったと言う気がせず、何度か読み直してみようと思います。

 

帯に「これはセンスが良くなる本です」と書かれていますが、正直なところは、センスの感覚がない人がこれを読んですぐに理解するのは難しいのかもしれません。

それでも漠然と自分にはないと思っていたセンスと言うものが、後から身に付けることができると言うことには気づけて、物の見方が変わるかもしれません。

どちらかというと、芸術活動をしている人が改めて、センスの正体について知ることができる本だと言えると思いますが、「私センスがないんです」と言う人にも、是非一度手にとってみて、そもそも漠然としているセンスの正体をあらためて考えてもらえたらいいな、なんて思います。

 

この本の内容はとても深いので、時間をかけて、これからもじっくりセンスにについて考えてみる、末長く付き合う本にしたいです。

良い本に出会えました。千葉雅也さんの他の本も読んでみようと思います。

 

 

 

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